第330話「長いようであっという間の夏」


今年の夏休みは、長いようであっという間。


朝から晩まで、基本は勉強。


気分転換に、蒼とお喋りしたり、散歩をしたり。


勉強は億劫だ。


蒸し暑い自室での勉強は、なおさらイライラする。


1日が長く感じて、早く終わらないかな、って、何回も時計を確認する。


だけど、思い返せば夏休みなんてあっという間だ。


あっという間に時間が過ぎて、気が付けばもう2学期。



「さて、3年生は受験に集中するために、9月末で引退となります・・・」



学校が始まれば、部活も始まる。


顧問である夕凪先生が、そんな話をする。



「先輩方が引退されると、私と三永瀬先輩だけになりますね」



と、天文部唯一の1年生、海老名歩夢の発言。



「そうですね」



それに冷たく反応するのが蒼。


この二人は同じ趣味を持っているにも関わらず、仲睦ましく話しているところは見たことがない。



「ところで村上先輩、受験の方はどうなんですか?」



引退した後、蒼と歩夢がうまくやっていけるだろうか。


そんなことを考えていると、歩夢から話題がふられる。



「受験・・・まぁ、何とか」


「勉強してるんですか?」


「してるよ」


「いけそうですか?」



大学に合格できそうなのか、そういう質問だろう。


受験の最終的なゴールは、大学に合格すること。


よく、合格がゴールではないと言われるが、受験という名目なら間違いなく、合格することがゴールだろう。


とはいえ、そのゴールに到達できるかと言われれば・・・。



「結構、厳しいかも」


「そういや、村上はどこの大学行くんだ?」



と、これは匠馬の発言。


同じクラスの匠馬だが、いわゆるスクールカースト的に、彼とは住む世界が違う。


よって、匠馬と教室で話すことはほぼない。


いや、全くない。



「明坂大」


「明坂? 学部は?」


「理学」


「え、村上って理系だったのか?」


「違うけど、その道目指そっかなって」


「すげーな、お前」


「そういう匠馬は?」


「俺は平凡な大学の文系。だから受験勉強なんてそこそこ」


「そか」


「お前は相当やってるみたいだけどな。教室とかでもやってるだろ」


「あー、うん」



例えば英単語とか、そういうちょっとした時間で覚えていけるものは、休み時間なんかを活用している。


どうせお喋りする友達もいないし、いつもは読書をしているが、それを勉強に充てるぐらい大した変化ではない。



「2学期の中間テスト、村上の結果聞かせろよ?」


「え・・・なんで」


「村上の学力がどんくらいか見てやるよ」



どうして匠馬がそんなに上から目線なのだろうか。



「はぁ・・・中間テストか・・・」



蒼が嫌そうな口調でボソッと呟く。


その発言については、俺も同感。


いくら受験勉強で日頃から勉強してるとはいえ、テストは億劫でしかない。


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