第327話「意味不明な相談」


夕暮れの駅前。


電車の時間まで、まだちょっとだけ時間がある。


少し早めに着いてしまったわけだ。



「今日は楽しかった。ありがと」



セシルがそう言う。


なにか特別なことをしたわけでもなく、なにか楽しいことをしたわけでもなく。


だらだらと、セシルとの1日を過ごした。



「ほんとに楽しかった?」


「楽しかったよ」


「そっか。せっかく遊びに来てくれたのに、大したことできなくて申し訳ないな」


「気にすることじゃないよ」



本人が楽しいと言うなら、それがなにより。



「一つだけ、相談がある」



口を開く。


紡いだ言葉は、たったその一言。


だけど、言葉にするのは想像以上に恥ずかしい。



「なに? 珍しいね」



セシルは少し驚いたような、でも、穏やかな表情で返してくれた。


セシルなら、何となく意味不明な相談でも乗ってくれそうな感じがした。



「大切な人を、幸せにする方法ってある?」



大切な人・・・っていうのは、少し表現が違うかもしれない。


でも、間違ってもいない。



「大切な人でもできたの?」


「まぁ」



大切な人の正体は、三永瀬蒼。


最近はずっと我が家に居候している。


距離が近すぎて、彼女に対しての感情がよく分からなくなってきている。



「難しい相談だね。なにか特別な関係なの?」


「一応、恋人なんだけど」


「へぇ? 友彦に彼女ができたんだ」


「一応」


「なに? 一応って」


「なんというか、ちょっとややこしいっていうか」


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