第326話「お互い何も考えてない」


「え、友彦大学目指してるの?」


「まぁね。受験は大変だよ」



特にやることもなく、セシルも行きたいところがあるわけではないらしい。


なので、河川敷にあるベンチに座り込む。


ここは、俺がよく日向ぼっこをするところだ。


セシルとの話題も特にないので、最近の出来事を適当に話していたら、受験という話題が出てきた。



「なに勉強するの?」


「天文学かな」


「意外。友彦って、そういうの興味ないと思ってた」


「まぁ、実際興味はなかったけど・・・」



全くないと言うわけではないが、あるかないかで言われれば、ない。



「私も大学は、地学系を学べたらなって思ってるよ」


「セシルだって、大学もうすぐって感じじゃない?」


「私はまだ。一回働いて、お金貯めてからかな」


「働くんだ」


「そんなに珍しい事でもないと思うよ」


「そうなんだ」



俺みたいにバイトをしていない人間からすれば、大学進学をしてもお金はない。


だから一人暮らしなんてできないし、遊びまくる資本力もない。


一度仕事に専念して、それから大学へ入学する。


ある意味、理想的な選択なのかもしれない。


まぁでも、日本だとその選択肢はあまり真似できないよな。



「セシルはさ、何の仕事するの?」


「うーん、あんまり考えてなくて。でも、適当な仕事を2年ぐらいするつもり」


「やりたいことないの?」


「大学に行くまでの、仮の仕事って感じだから」


「なるほど。大学卒業したあとは?」


「うーん。やっぱり、大学で学んだこと活かしたいけどね」



ということは、地学系の職業。



「地学系って、例えばどんなものがあるんだ?」


「うーん・・・やっぱ研究職じゃない?」


「やっぱそっち系なのか」



俺も大学受験で結構頑張ってるつもりだし、就職するなら、大学で学んだことを活かせる職業が良いのかもしれない。


それが一番、努力が報われるというか、頑張ったのが形として現れるんじゃないかって。



「友彦も、研究職?」


「考えてないけど、まぁそれもアリかなって」


「あんまり考えてないんだね」


「セシルもそうじゃない?」


「バレタカ」


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