第317話「受験のはなし」


なぜこうなったのだろうか・・・。


現在、天文部の1年生である海老名歩夢と、なぜかファミレスにきている。


岩船先生の家から帰宅中、偶然出くわして、それから半ば強引に連行され、今に至る。



「付き合ってくれてありがとうございます」


「誰も付き合うとは言ってないけどな」


「でも、ここにいるってことはOKってことですよね?」


「わかったよ」


「やった! 私、一人じゃファミレスとか入りにくくて」


「あー、それは分かるな」



俺の場合、飲食店全般が一人じゃ入れない。


ファミレスなんてもってのほかだ。


だけど、誰かと一緒に行けば、別に何とも思わない。


1人と2人の差に、圧倒的な壁がある。


もちろん1人で行ったって、何の問題もない。


だけど、2人で行かないと、不思議と入りにくいものだ。



「先輩って、どこの大学目指してるんですか?」



そんな質問をしてきた海老名は、現在注文したハンバーグを頬張っている。



「明坂大」



無機質に、単調に、棒読みに答える俺は、サラダをつまんでいる。



「明坂・・・先輩って、意外と頭いいんですね」


「良くないよ」


「明坂大目指すぐらいの頭持ってるんだったら、それなりに優秀なはずですよ」


「俺の場合は、無謀な挑戦なんだよ」


「どうして?」


「海老名さんには信じてもらえないかもだけど、彼女がどうしても一緒の大学が良いって言うからさ」


「一緒の大学がいいって・・・それで、彼女の第一志望の大学を目指してると?」


「まぁ・・・」



蒼の第一志望なのかは知らないが、蒼のやりたいことができる、家から一番近い大学が明坂大。


中の上ぐらいの難易度で、理系は特に、それなりに頭が良くないと入学は厳しい。



「・・・っていう妄想ですか?」


「違います」



どうにも、海老名は俺に彼女がいるって事実を認めてくれない。


まぁ名前も伏せてるし、実際に彼女の顔を見てるわけでもないからな。


疑っても仕方ないのかもしれない。


とはいえ、もう少し人の言うことを信じても良いような気はする。


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