第313話「岩船先生の勉強法その2」


学校に行って、授業を受ける。帰宅してからは、最低30分、目標1時間の勉強。


数字だけを見ると、受験生にしては全然勉強をしていないように思える。


だけど、実際にやってみると、相当な負担だ。



「疲れた・・・」



最低ラインは30分だが、いつも目標の1時間は勉強するように心がけている。


たった1時間とはいえ、終わったときには疲労困憊。



「お疲れ様。今日も頑張ったね」



と、蒼はいつも労わってくれる。


この一言だけでも、十分すぎる励ましだ。



「疲れたけど、こんなんで明坂大なんていけるのかな」



明坂大は、いま俺が目指している大学。


現状は、1日1時間勉強をしている程度。


それなのに、目指す明坂大理工学部の偏差値は55と言われている。



「先輩は、偏差値を10以上上げないといけないですからね」



蒼のその言葉のように、俺の偏差値はせいぜい40前半か、良くて後半。


最低でも10は上げないと厳しいというのが現実だ。


俺と蒼が危惧しているのは、勉強時間が短すぎるのではないか?


と、いうこと。


岩船先生の助言で、今はそれに従っている。


1週間とちょっと、これを続けてきたが、偏差値が上がっているような感じはしない。



「うーん・・・でも、2週間は続けろって、言ってたしな」


「岩船先生の言うことも一理あるのかもしれないけど、先輩自身が考えて行動することも大切だと思うよ」


「それはそうかもしれないけど、受験って一回きりだから、なるべく安全で確実なルートを選びたいんだよ」



その安全で確実なのが、受験を経験し、教師としての経験もある岩船先生の助言だ。



「浪人したらいいんじゃない? そしたら私と同学年よ」


「いや、浪人はちょっとな・・・」


「先輩って、普通に社不だと思ってたんですけど、変なところで常識ありますよね」


「悪口言われてない?」


「褒めたんですよ」


「そうには聞こえなかったよ?」


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