第311話「二人の共通点」


参考書をリュックサックに入れて、本屋から帰宅。



「すごい量だね」



どっさりと重さのあるリュックサックからは、次から次へと分厚い参考書が出てくる。



「果たしてこんなに勉強できるのだろうか」


「これ、私も勉強することになるんだよね・・・」



参考書の数は全部で10冊。数で言えばそこまでではないが、1冊が分厚いため存在感はかなりのものだ。


蒼も1年あと追いで受験することになるので、これと同じ勉強をすることになる。



「蒼は基礎があるから、多少は楽だと思うけどな」


「そんなことないよ」



と、参考書を本棚にいれながらおしゃべりをする。


何冊か本棚にいれていくと、蒼があることに気づく。



「これ、全部ジャンル違うんだね」


「ジャンル?」


「科目・・・みたいな」


「そうなんだ」


「大まかにいえば、物理とか・・・これは化学」


「あ、そういうの」



てっきり、同じ科目の参考書を何冊も買っているのかと思った。


中にはかぶっているのもあるが、もっと細かい分野を見れば、しっかりと分かれている。


中身をよく見ると、問題集なんかも含まれていて、全部が全部参考書というわけではなさそうだ。



「ちゃんと考えられているみたいだね」


「と、言いますと?」


「なんかさ、参考書って1冊で十分って聞くじゃん?」


「そうなの?」


「同じジャンルでたくさんあっても、あんまり意味ないらしいよ」


「そうなんだ・・・。まぁ、そこは岩船先生だから」



選んだのは岩船先生。


俺は全く分からなかったので。



「もう先生じゃないでしょ」


「元、先生? でもとにかく、その道の人だよ」


「まぁ・・・なんか悔しいけど」


「蒼はほんと嫌いだよな、岩船先生のこと」


「別にそんなことないけど」



天文や読書など、蒼と岩船先生は共通の趣味が多い。


性格の傾向もどこか似ている。


何というか、二人ともうるさくて騒がしい感じではない。


大人しいし、その割にはお喋りを楽しむタイプ。


だからというほど、人間関係は簡単なものではない。


だけど、もう少し気が合ってもいいような気はする。


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