第307話「嫁スキルを披露する相手」


「夕飯でも食べていくか?」



進学の話もそこそこ、これから勉強頑張るぞ! ってタイミングなのに、なぜかゲームを始めてしまう。


俺と岩船先生の共通の趣味。それがゲーム。


何だかんだで久しぶりに会ったわけですからね。


好きなことやりたくなりますよね。


そんな感じで気が付けば、外は真っ暗。


夕飯にするにしても遅いと言える時間帯になっていた。



「じゃあ。お言葉に甘えて」



割と長時間、岩船先生とのゲームを楽しんだ。


だからなのか、胃の中は空っぽ。お腹がすいていた。



「わかった。うむ・・・」



キッチンに立つ岩船先生は、かなりの異彩さを放つ。


もっと簡単に言ってしまえば、似合わない。


理由は説明できないが、違和感を感じる。


岩船先生は女性なわけだし、キッチンに立つ姿は様になってもいいような気はする。


というか、男女関係なく、キッチンに立つのが似合う似合わないなんて、そこまで発生する事案ではないはずだ。


だけど、実際はそうではなかった。



「先生、大丈夫そうですか?」


「あぁ・・・そうだな。慣れないことはするもんじゃないな」



岩船先生のその一言が物語るように、彼女は普段から料理などしていないのだろう。


妙に綺麗なキッチンは、近づけば埃がちらほらと。


その状況が、すべてを語っている。



「村上、コンビニに行かないか?」


「そうですね」



岩船先生の手料理を食べてみたい感はあるが、それは無理がありそう。


料理ができないのか、できない訳ではないが、日常的にやらないから慣れていないのか。


どちらにしても、岩船先生の手料理を食べることはできないということだ。



「すまないな」


「別に、先生が謝ることでは・・・」


「なんというか、家事が全然できなくて」


「岩船先生って、そんな感じします」


「それは偏見か?」


「そ、そうですね」


「日頃の行いから、私は嫁スキル低めに見られているのか」



ちょっとがっかりしたような、ショックを受けたような反応。


本人的には、やっぱり気にしていることなのだろうか。



「今からでも練習すれば、嫁スキルは上がっていきますよ」


「そうれもそうなのだが、披露する相手がいないからな。いつもそこに気づいてあきらめる」



悲しき現実。


なんというか、まずはお相手探しからですね・・・。


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