第304話「二人の学力差」


蒼の学力が想像をはるかに上回る数値を叩き出していた。


それと同時に、自分の学力の低さが露呈してしまったところで、少し思うところがある。



「蒼さ、俺と同じ大学に行こうとしてるよな?」


「そのつもりだけど」


「その学力じゃ勿体ないよ。だから、ちゃんと自分のレベルにあった、自分のやりたいことができる大学に行くべきだと思う」



正直、俺と蒼の学力は雲泥の差と言えるレベルだ。


同じ高校にいることが奇跡のようなもの。


蒼は、俺の入学した大学に後追いで入ると言うが、蒼の学力だとその能力を持て余すのは目に見えている。


だから、蒼には蒼のレベルに合った大学に行ってほしい。



「うーん。検討しとく」


「絶対しないだろ」


「バレた? あはは」


「バレてるよ」


「いやぁ、センター当日に風邪ひいちゃって」


「今はセンターって呼び名じゃないだろ。ってか、そんな都合よく風邪ひいてたまるか」



真面目な話をしたいのに、冗談にされたら困るんだよな。


でも、強く言って空気が死ぬのは避けたいし・・・うーん。



「蒼はさ、行きたい大学ないの?」


「先輩の大学かな」


「それ以外で」


「ないかな」


「それも嘘でしょ」


「嘘じゃないよ」


「嘘だと思う。蒼って結構将来のこととか、やりたいこととか明確にある人だと思うし」


「ないよ。部活でも話したでしょ?」


「そりゃ、部活ではあぁ言うよ」


「なんで?」


「なんでって言われても、蒼ってそう言う人だと思ってるから・・・」



なんか変な言い方かもしれないが、その通りの印象。


能ある鷹は爪を隠す・・・みたいな?


どちらかと言えば、人が見えないところで努力している、みたいな印象。


何も考えてないようで、実はしっかり考えがあるのが蒼という人だ。



「ふ、ふーん・・・私のこと、よく分かってるじゃん」


「曲がりなりにも彼氏なので」



と、まぁ。蒼が折れてくれたようなので。



「訊かせてもらおうか。蒼のやりたいこと」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る