第302話「見せ合いっこ」


6月を迎えて、雨が降る日が多くなってきた。


傘を使う機会も多くなり、ジメジメとした毎日。



「どうでした?」



学校から帰宅。


自室に蒼と二人で入る。


蒼はいつもなら、着替えをもって脱衣所へ向かうが、今日は制服のままで興味津々なご様子。



「どうって・・・」


「見せてくださいよ!」


「あ、蒼の方から・・・」


「なんで恥じらってるんですか。もっと自信もってください!」


「いや・・・まぁ」



こうなることは分かっていた。


今日は中間テストの返却日。各教科の点数が一挙に分かる日だ。


蒼に責め立てられたので、泣く泣くテストをカバンの中から取り出す。



「うーん・・・」



1年年下の蒼。一つ上の先輩として、みっともない姿は見せたくないという謎のプライドが発動してしまう。


とはいえ、そのプライドを擁護するほどの学力はないのが現実である。



「先輩って、思ったより学力低いんですね」



と、刺さるような一言。


悪かったな・・・これでも頑張った方だよ。



「ま、まぁ・・・」


「これが先輩の最善だとするなら、進学先はかなり限られてきますね」



そんなことは分かっている。


自分の学力が低いことは承知の上だ。


今回のテストは割としっかり勉強したのだが、どれも平均点にちょっと届かないぐらい。


これでもいつもよりかは点数が取れている。



「まぁでも、先輩しっかり勉強してましたもんね。頑張りましたね」


「なんか煽られてるようにしか聞こえない」


「そんなことないですよ」


「それより、蒼はどうなの?」


「え、私ですか・・・」



ちょっと抵抗のあるような反応。


とはいえ、俺のを見たわけだし、ここで見せないという選択肢は存在しない。



「蒼の学力はどんなものかな?」


「いや、今回ほとんど勉強してなくて」


「嘘つけ、俺が勉強してるときはいつも一緒に勉強してたじゃないか」


「あれだけじゃ・・・ねぇ」



しれっと俺の勉強時間が足りないみたいなことを言われてしまった。


これは遠回しの指摘なのか・・・それともマウント!?


だとするなら、これは相当な策士だな。


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