第290話「病の季節」


5月は病の季節だ。


五月病。学校にとにかく行きたくなくなる。


今日は学校を休もう。今日こそは・・・。


そう言いながらも、毎日学校に行く。


なぜなら・・・。



「ほら先輩! 起きてください!」



我が家には、三永瀬蒼がいるから。


彼女は毎日俺のことを叩き起こす。



「今日ぐらい休ませてくれ」


「何言ってるんですか。学校行きますよ」


「今日ぐらい良いだろ」


「一度休むと癖がついちゃいますよ」



休み癖は本当に良くない。


蒼は学校を休みがちになる季節があった。


だからこそ、そこら辺は経験者としてよく分かっているのだろう。


とはいえ、だ。



「せめてもうちょっと寝かせてくれ」


「ダメです。あと30分で出かける時間ですよ」


「そんなこと知らんよ」



こんな会話を、毎日やっている。



「ほら! 先輩!」



そう言うと、蒼の最終手段が実行される。


掛け布団を取っ払い、背中に手をあて、そのまま持ち上げる。


強制的に、蒼の片腕によって上半身が起き上がり、5月のまだ寒い朝の空気に晒される。



「さぶっ・・・」


「目覚めました?」


「寒いから布団返して・・・」


「ダメです。温まるなら着替えて私の胸の中で温まってください」


「それは遠慮しておくよ」


「どうしてよ!?」



ゴールデンウイークも終わり、倦怠感が続く五月という季節。


蒼は未だに、俺の部屋に居座っている。


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