第282話「近所のプリン屋さん」


デートと言われて家を出て、やってきたのは近所の個人商店。


閑静な住宅街の一角にあるレンガ造りの一軒家で、他とは異彩を放つ見た目をしている。


店先からは、長蛇の・・・というほどでもないが、そこそこの行列。



「ここは?」


「先輩、知らないんですか? 有名なプリンのお店ですよ」


「あ、そうなの?」


「前から食べたいと思ってたんです! 並びますよ」



家から徒歩10分ほど。こんなお店があるなんて知らなかった。


どんな味がするのだろうか。そんなことを思いながら、行列に20分ほど並んでプリンを購入。


近くの公園まで移動して、そこで食べることに。



「うわー! 美味しそうですね!」



テンションが高い蒼さん。相当食べたかったんですね。


プリンは1個400円とそこそのお値段。


手の平より小さいサイズの、透明なガラス瓶に入っており、プリンの色はくっきりとした黄色だ。



「いただきまーす!」



蒼が一口食べて、言葉にしなくても分かる表情で美味を表現する。


色がくっきりしているので、何となく味が濃厚なのだろうと思っていたが、そんなことはなかった。


どちらかと言えば、すっきりとした味で食べやすい感じ。


舌がざらつくことのないプリンだ。


でも、市販のプッチンプリンとかと比べると雲泥の差だ。


こちらの方が圧倒的に美味しい。



「400円の価値はあるな・・・」


「安いぐらいですよ。私なら倍でも買いますよ」


「倍って・・・800円でも買うのか」



人気のお店ということで、人気なのにはそれなりの理由があるんだなって。



「さて・・・」



食べ終えると早々。蒼が立ち上がってエスコートする。



「行きますよ!」


「あ、はい」



返事をすると、差し出された手を自然と掴む。


何も考えずにやったけど、刹那に動揺してしまう。


さりげなく手を繋いでしまったと・・・。


でも、全ては後の祭り。蒼に関しては何も反応していないし、当然のことのように受け入れてる。



「んふふ・・・あはは」


「え、え?」


「先輩、動揺してません?」


「えっと・・・」


「これで2回目ですよ? 手を繋いだぐらいで動揺しちゃって。小学生ですか?」



なんか、バカにされました。


バカにされたせいで、動揺が収まりました。さすが蒼さんです。ムカつきます。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る