第281話「インドアな彼氏」


5月4日。みどりの日。その日に、蒼とお出かけもといデートをすることになった。


蒼はいつも以上に張り切っていたが、対する俺は気乗りしない。


世の中はゴールデンウイークということで、どこに行っても人だらけで混みまくっている。



「おうちデートってやつじゃダメなんですかね?」


「ダメ! 先輩と一緒に出かけたい」



だそうです。


蒼と一緒にいる時間はかなり長いが、未だにこういうことを言われると胸がときめいてしまう。


ときめいてしまったので、断りきることができず、一緒に仲良く家を出る。


季節は5月ということで、過ごしやすい気候だ。


天気もよく晴れているし、お出かけ日和と言えばその通り。



「それで、どこ行くの?」


「先輩は、どこ行きたいですか?」


「家かな」


「それは帰るってことじゃないですか!」



帰りたいが本音ですからね。


こんな彼氏でごめんなさい。



「とりあえず、今日は私に付いてきてください!」



そう言われたので、黙ってついていくことに。


いや、一言だけ口を挟ましてもらう。



「混んでるところだけはやめてね」


「先輩って、人混みほんと苦手ですよね」


「あれはほんと無理。それに、はぐれるよ」


「こうやって手を繋げば大丈夫ですよ」



そう言っている最中、すでに握られていた蒼の手。


こうしていると、なんか照れくさくなる。


そして、異様なほどに手汗を気にしてしまう。



「あはは、先輩緊張してますね?」


「悪かったな・・・」


「ちゃんと私のこと、そういう風に見てくれてるのはちょっと嬉しいです」



あれま・・・意外と好印象なんですね。


とはいえ、こんなことで緊張して手汗が出て、そしてエスコートも蒼にお任せ。


なんというか、自分が不甲斐なく思えてくる。


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