第277話「これからのはなし」


4月の下旬。3年生という新しい生活にも慣れてきた頃の、とある休日。



「久しぶりだな」



そう言いながら、ホットコーヒーを出してくるのは岩船先生。


今日は、岩船先生の家にお邪魔している。



「ほんと久しぶりですね」



3月以来だろうか。


この1ヶ月で、ちょっとだけやせ細った気がする岩船先生。


色々あって教師を辞めて、今はニートとのこと。



「天文部、新入部員は入ったか?」


「今のところは。まだ仮入部期間ですから」


「本入部はいつからなんだ?」


「ゴールデンウイーク明けぐらいですかね」


「なるほど。その仮入部に、人は?」


「まぁ2~3人ってところですかね」


「一応来てるんだな」


「夕凪先生が宣伝してますから」



新入部員の勧誘は、顧問である夕凪先生が一番やる気がある。


次いで、部長って感じ。


部長の蒼は、半年後に1年生を部長に任せるという大きな目標があるから、勧誘には意外と意欲的。


そして俺と匠馬はどうでもいい派。


俺はむしろ反対派ですらある。



「まぁ楽しくやってればいいさ。そんなことより村上、進路はどうするつもりだ」


「進路・・・ですか」



正直、何も考えていない。


高校3年生になったということで、進路については真剣に考えないといけない時期ではある。



「まずは進学か、就職か」


「ですね。どっちがいいんでしょうか」


「教師としてではなく、わたし個人としては進学がおすすめ」


「なるほど」


「働いたって、いいことないぞ」



社会人は皆そう言う。


学生の方が気楽なのは間違いない。


その代わり、お金がない。時間は大量にあるが、とにかくお金がない。


社会人はよくその逆と言われるが・・・果たしてどちらが良いのだろうか。


とはいえ、働きたくないのが俺の根源にある考え。


となると、進学になるのかな・・・。


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