第276話「新たな部長の後悔」


「やってしまった」



部活帰り。当たり前のように一緒に帰り、当たり前のように我が家にやって来る。


お泊りの期間は春休みだけという話だったが、この雰囲気はこれからも居座りそうな予感・・・。


それはそうと、部屋につくなり畳にうつ伏せで絶望感に浸る蒼さん。



「どうした?」


「部長になってしまった」



そのことか・・・。


天文部の部員は3名。俺・・・もとい友彦と蒼、それから匠馬だ。


うち、俺と匠馬は3年生になる。


今まで俺が部長をしていたが、3年ということで部長のバトンを誰かに受け渡す必要があった。


天文部で3年じゃない部員は蒼しかいない。ということで、消去法的に蒼が部長になったわけだ。



「やりたくないよー!」



と、足をバタバタさせて、全力の訴え。


こちらから見たら、ただわがままを言っているようにしか思えない。


とはいえ、やりたくない気持ちは尊重する。


俺も2年間部長をしていたわけだが、最初はやりたくはなかった。



「別に、気にすることはないでしょ」


「どうして!?」


「だって、俺だって2年間部長やってたけど、部長らしいこと何もやってないぞ?」


「予算会議とかめんどくない?」


「いや、出たことないけど」


「え? 出てないの?」


「いや、知らん」


「はへ?」



その反応を見るに、多分出ないといけないやつなんだろう。


でも、実際なんのアナウンスもされてないので、俺はその存在すら知らないという。


岩船先生・・・今までどうしてたんだろ。



「ま、まぁ・・・多分気にすることはないと思うよ」


「無責任だ!」


「んなこと言われても・・・それとさ、蒼はいつまでうちに居る気なの?」


「え? もうここが我が家じゃないの?」


「違います」


「ひどい! そんなに私のこと嫌いなんだ!」



なんか今日、蒼のテンションがずっと高いまま。


部長になったことが、そんなにも嫌なことだったのだろうか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る