第275話「新たな部長」


「とりあえず、部長を決めましょうか」



夕凪先生が顧問となり、最初の部活動。


最初にやることは、部長決めとのこと。



「ってか、今まで誰が部長だったんだ?」



と、匠馬が言う。


そう言うのも無理はない。


部長らしい仕事はしていない・・・というか、無かったの方が正しいかもしれない。


天文部においては、部長は名ばかりの管理職だ。


もちろんいい意味で。



「一応、俺ですね」


「村上だったのか」



俺しかいないでしょ。だって天文部で1年からいるの俺だけなんだから。



「でも、友彦くんも匠馬くんも3年生だから、今年の秋には引退よ」


「ってことは、消去法的に部長は私になるんじゃ・・・」



と、蒼が嫌そうな顔をして言う。


言葉にしなくても、やりたくないんだなって気持ちは伝わってくる。



「お願いできる? 蒼ちゃん!」


「は、はい・・・はぁ」



渋々部長になることを了承する蒼。


思わずため息が出てしまう。それほど嫌なんだろう。



「部長も決まったことだし、今年も新入部員さんをたくさん獲得するぞ!」


「おー!」



夕凪先生と匠馬がノリノリな中、俺と蒼は沈黙というこの空気差。


新学期ということで、新入部員がきてしまうのは仕方のないこと。


個人的には、これ以上天文部の部員が増えることは勘弁してほしいってところ。


元々部員がいないからという理由で入った部活動なんだから・・・。



「村上先輩・・・」


「ん? なに?」



盛り上がっている二人の雑踏に紛れ、小声で話しかけてくる蒼。



「部長って何するんですか?」


「いや、特には」



俺も何だかんだ2年間部長をやってたけど、それっぽい仕事はしてこなかったし、心配することはないと思う。


ただ役職名がつくだけ。それだけのことだ。



「嫌なんですよね。こういうの」


「まぁでも、蒼ならやれると思うよ」


「そ、そう?」


「うん。大丈夫だよ」


「・・・分かった。先輩がそう言うなら頑張るよ!」



蒼って褒めると素直になる、こんな分かりやすい人だっけ・・・?


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