第261話「本当の三永瀬蒼とは」


三永瀬蒼は、我が家に居候している俺の恋人(仮)だ。


彼女は大人しく物静かな時期があったり、グレて威圧的な時期があったり、そして今は、俺のペースに合わせてくれる優しい性格だ。


どれが本当の蒼なのか。それとも、どれも本当の蒼じゃないのか。


長い時間、蒼とは一緒にいる。なのに、全然ボロを出さない。


それほど完璧に演じているのか。それとも、これが真の三永瀬蒼という姿なのか。


いずれにせよ、それを証明することはできない。


本人に訊いたとしても、俺が納得できるか、という問題がある。


それは要するに、信用がないということ。



「先輩?」


「・・・えっ? なに?」


「いや、さっきからジロジロ見られてる感じがして」


「あいや、そんなことはない」



不思議そうに問いかける蒼だが、すぐに表情が和らいで。



「なんですか? 先輩。私がそんなに可愛かったですか?」


「あのねぇ」


「いいんですよ? 私はいつでもウェルカムですから!」



そう言うことではないんですけどね。


蒼のそう言うところが怖いから、俺は彼女に対して好意を抱くことができないのかもしれない。


まぁ言い訳といえば言い訳だ。でも、そうとしか言いようがないのも事実。


蒼の容姿はすごく良いと思う。見た目も可愛いし、身長も低くてどこか愛らしい。


俺みたいな人間には、勿体ないぐらいの存在だ。


俺が蒼のことを好きになるなんて、恐らく簡単な話なんだろう。


友達がそもそも少ない俺にとって、異性と関わってきた歴史はほとんどない。


それほど、異性に対する耐性がないわけだ。


つまり、落ちやすいということ。


そんなチョロい人間なのに、俺は蒼に対して好意を抱くことができない。


なんというか、本能的に避けているような感じがする。


この人はダメだ。と・・・。



「ちょっと、出かけてくる」


「どしたん急に? ・・・先輩?」


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