第256話「新たな日常の序章」


家に帰ると、当たり前のように蒼もセットでいる。


この光景が当たり前になるのはちょっと違和感というか。


しかしながら、そろそろ俺の部屋にも馴染んでくるような・・・。



「あのさ」


「なに?」


「あいや、なんというか・・・今日から1か月ぐらいうちにいるんでしょ?」


「そのつもりだよ」


「蒼の親はさ、大丈夫なの?」



年頃の娘が、男の家に1ヶ月も居候する。


そんなこと、普通の親がOKするとは到底思えない。



「知らない」


「言ってないの? 親に」


「言わないよ。会話しないもん」


「心配しないの?」


「してると思う? 以前の私を知ってても」



まぁ・・・としか、言い返せなかった。


グレた蒼を知ってる身からしたら、そんな状態でも我が子を放置していた親がまともとは思えない。


つまりそういうことなんだろう。


そう考えると、自分の親はまともな方なんだなぁって、つくづく実感する。



「やっぱり、実家は居心地悪い?」


「うん」


「だから、俺の家に来てるの?」


「それもある。でも、誰の家でも良かったってわけじゃないよ?」


「あ、うん。それはどうでも良いんだけど」


「大事なことだと思うんだけどなぁ」



俺からしたらどうでも良いことである。


とはいえ、可哀想というか、不遇な感じは否めない。


やっぱ親ガチャって存在するんだな。



「先輩の家庭は、とても暖かいね」


「俺はこの家庭しか知らないから分からないけど、蒼の話を聞いてる限りだと、俺も同感」


「優しいよ、ほんとに」



優しいのかはよく分からないが・・・。


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