第255話「彼女にとっては最後の活動」


終業式のあと、天文部の活動があった。


部室に現れたのは、俺と蒼、そして匠馬に岩船先生。



「集まってくれてありがとう。今日は早めに終わらせる」



と、岩船先生が声をかける。


今日は元々、活動日ではなかった。


春休みも一切の活動はないとしていた。


それもそのはず・・・。



「聞いている人もいるとは思うが、私は今年度で教師を辞めることになった。だから、来年度からは別の顧問が就くことになるだろう」



岩船先生が、教師を辞めてしまう。


理由は分からない。


でも、前々から聞いていた話ではある。



「次の顧問はな・・・」



それから、岩船先生のお話がしばらく続いた。


そしてそののち、解散という流れになった。



「それじゃ。また4月にな」



そう言い、早々に帰宅するのは匠馬。


こいつは何だかんだで、部活にはちゃんと来ている人間だ。



「おう」



適当に返事をすると、部室から姿を消す。


そして蒼と岩船先生と、自分。3人になる。



「やぱり、辞めるんですね」


「すまないな。村上」


「いえ・・・色々と事情がありますもんね」


「また一緒に旅行とか、天体観測とか。またどこかで会えると思う」


「いいですね。ぜひ」



岩船先生が教師を辞めることは残念なことだ。


でも、だからと言って会えなくなるわけではない。


二人は教師と生徒の関係でしかない。でも、こうやってまた会おうと言ってくれるのは、純粋に嬉しい。



「三永瀬もな」


「あ、わたしですか?」


「3月は目立った流星群がないから退屈だな」


「適当に金星でも観るつもりです」


「そうか」


「田舎のほうに行ければ、もっと遠くの星を観てみたいですね」


「夢が広がるな」



適当な雑談をしつつ、30分もすれば部室をあとにした。


岩船先生と次に会えるのは、いつになるのだろうか・・・。


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