第254話「少しでも長くしたい二人の時間」


蒼が村上家にやって来ることがすっかり定着してしまった。


金曜日から日曜日までは、当たり前のように泊っていくようにもなった。


それを良しとするうちの親もどうなのかと思うが、ここまで来ると、蒼の家庭環境が気になるところ。


以前に蒼から、家庭環境が悪い・・・みたいな話を聞いている。


それを踏まえると、家にいたくないからうちに入り浸っているようにしか思えない。



「おはようございます! 先輩」



そして今日も、俺が起きる前から我が家にやって来ている蒼。


いつも通りの制服姿に、いつも通りの振る舞い。


すっかりと馴染んだちょっと企み顔に見える笑顔。



「んー・・・あと5分だけ寝かせてくれ」


「そんなこと言ってると、遅刻ですよ」


「5分経ったら起こしてくれ」


「じゃあ私も一緒に寝ていいですか?」


「起きます」



未だにイチャイチャするような行為には抵抗感がある。


ゆえに、蒼とはこれと言って恋人っぽいことはしていない。


蒼からしたらきっと、不満に思ってるだろう。



「あ、先輩。相談なんですけど」


「なに?」



布団から起き上がった瞬間にかけられる言葉。


頭がボーっと、完全には起きていない感じがするが、とりあえず応答する。



「明日から春休みじゃないですか」


「そうだな」



春休みという単語をきいて、ボーっとしていた頭からアドレナリンが分泌される。


今日は終業式。明日からは春休みだ。


やっと憂鬱な学校が終わり、長期休暇へと移行できる。


昼間まで寝て、ゲームして、飯食って寝る。


そんな最高峰の生活ができる夢の期間。



「わたし、春休み中はずっと先輩の家にいますので」


「???」



夢の期間、計画破綻の危機。



「ちなみに、先輩の親には許可取ってますので」


「母上殿!?」



どうして許可下ろしたんですかね。


どうしてなんですか?


男女が寝泊りしたら、一般論的にどうなるか想像できないんですか!?



「なので先輩。1ヶ月近く一緒にいれますね」


「少しは一人にさせてくれ・・・」


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