第251話「複雑な心境の言語化」


「一つ疑問に思うことがある」



蒼に、そう投げかける。


これは確認事項。だけど、言葉にするのは恥がともなう。



「なに?」


「もし俺が蒼の気持ちに応えたとすると、お付き合いするってことになるの?」



自分でも痛々しいというか、変な質問ということは分かっている。


でも、俺にはそういう知識もないし、経験もない。


だから、訊かないと何も分からない。


相手の期待を、変なところで裏切るようなことはしたくないから・・・。



「好きって伝えて、それで終わりなの?」



俺の質問を、蒼は質問で返してくる。



「終わり・・・ってことはない・・・と、思う」


「さすがにそれは、小学生ぐらいじゃない?」


「なる・・・ほど」



さすがに好きと言ってそれで終わりではないよう。


まぁそりゃそうですよね。想いを伝えるというのは、次のステップに移行するための儀式のようなもの。



「蒼は、付き合うってどんなことだと思うの?」


「そうですね。やっぱ一緒にいる時間は多くしたいですよね。お喋りとか、デートとか」



なるほど。そういう感じなのか。


でもそれって。



「今とあまり変わらなくない?」



現状の俺と蒼。そこまで変わらない説。


一緒にいる時間だって、朝から夜までほぼ一緒。もちろん学校では学年が違うので会うことはほぼないが、登下校と部活は一緒なわけだし、朝と最近は放課後も俺の家に来て、何をするでもなくダラダラしている。


土日にだって俺の家に来ている。


お喋り・・・に関しては、あまり自信はない。でも、蒼とはそれなりに会話をしていると思っている。


デート・・・は、まぁよく分からん。


おうちデートならたくさんしていると思う。



「と、まぁ・・・」


「なるほど。でもさ、先輩。それは友達としてのそれでしょ?」


「まぁ・・・それが?」


「友達と恋人だと、やってること同じでも意味が全然違うんだよ?」


「それは、何となくわかるけど・・・」


「いや、分かってないね」


「ソウデスカ」


「そうです」



形式というか肩書というか、そういうのにこだわりたいって話なんですかね。



「疑問はなくなりましたか? 先輩」


「うん。その上で俺が言いたいことは、蒼のこと好きかどうかはまだ分からないけど、これから良さに気づいていきたいなぁって。それに、今とあまり変わらない関係になりそうだし・・・だから、それでもいいなら付き合うことはできる・・・と、言いますか。身勝手なことは分かってるけど、それが俺の精一杯の回答です」


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