第249話「存在しなかった恋のライバル」


「先輩のことが好きだからですよ?」



そんなことを蒼から言われてしまった。



「えっと・・・好き・・・ってのは。。。」


「loveですよ。likeなわけないじゃないですか」



そ、そうなのか・・・。



「いや、でも・・・なんで」


「本当は先輩の方から告白してほしかったんです。でも、先輩は鈍感すぎるし、ヘタレすぎるから」


「それはすまない・・・」



たしかに、俺に任せておいたら一生告白なんてしない。


恋人とか、そういうのは縁のないことだと勝手に決めつけていたから。



「だから先輩。今までの発言は全て本気! 嘘偽りのない発言ですからね!」



語彙を強めて言われた。


そんなこと言われても・・・って感じだ。


これってもしかして、返事をしないといけないのか?


だとするなら、今までの発言は実行しても問題はない?


でも、蒼は真剣に恋をしているのに、俺は邪な気持ちでいいのか?



「センパイ」


「あ、はい」


「先輩は、やっぱり岩船先生の方が好きですか?」



えーっと、はい?



「え、えっと、どうして先生が出てくるの?」


「だって、仲がいいじゃないですか。わたし、岩船先生に負けないように必死にアピールしたんですよ?」



さっきまでの威勢の良さはどこにいったのやら。


細々とした口調で、そんな訴えをする。


いかにも自信なさげな感じだ。



「まぁ確かに仲良いかもだけど、さすがに岩船先生が恋愛対象になることはない・・・かな?」



あの人、もう30代とかですしね。


さすがに10年も離れていると、恋愛対象にはなりえないかな。


ジェネレーションギャップっていうのかな?


共通の趣味は多いけれど、その中でも感性はやっぱり違ってくるわけだし、年齢が離れているとそこら辺は難しいところ。


それに俺も岩船先生も、色恋沙汰には興味ない。



「じゃあ、先輩は岩船先生のこと好きってわけじゃ」


「さすがに・・・良い先生ではあると思うけど」


「そ、そうなんだ・・・。ふぅ」



どこかホッとしたようなため息。


安心したのだろうか。ライバルがいないと分かってホッとしたのだろうか。



「それで先輩。先輩は私のこと、どう思ってますか?」



まぁ・・・そういう話になってきますよね。


お返事・・・。どうしましょうか。


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