第248話「その勇気が、その後を大きく変える」


「・・・」


「先輩?」



生きていれば、勇気を出さなくちゃいけないタイミングってのがあるはずだ。


その好機は、定期的に訪れる。


今は、まさにそのタイミングなんじゃないかって思う。



「蒼はさ、どこまでが冗談で、どこまでが本気なの? 俺にはそれが分からない」


「冗談? 本気?」


「今までの発言とか、例えば年末年始のこととか」



蒼の性格が、思考が、もはや何も分からない。


最初は大人いそうな風貌だった。


それからグレた性格になった。それが蒼の真の姿なのかと思った。


でもそれから、今みたいな性格になった。


どれが本物の蒼なんだ?



「先輩が何を言っているのか分かりませんが、私はいつも本気ですよ」


「そんなことないだろ」


「本当ですよ? もしかして先輩、冗談だと思ってました?」


「思ってた。そうじゃないと意味が分からないから」


「ほんと先輩って、自己評価低いですよね」



蒼からはよく言われる自己評価だとか自己肯定感だとか。


もちろん低いに決まっている。こんな俺が、自分に自信を持てるわけがない。



「先輩はヘタレです。そんな先輩に期待していた私がバカだったのかもしれません」


「その通りだと思うよ」


「先輩は私の今までの発言。例えば何が冗談だと思ってます?」


「えっと・・・例えば、さっきの添い寝したいとか」


「本気ですよ?」


「年末年始のえっちなことをそそのかすようなこととか」


「本気ですよ?」


「そんなわけ」


「どうしてそんなこと言ったと思います?」


「どうして?」


「先輩のことが好きだからですよ?」



言葉がつまった。口が動かない。


この発言そのものが、冗談じゃないかって思ってしまうから。


でも、蒼の表情は、全く笑っていない。


真剣そのもの。真面目な顔。


だから、こんな状況でも冗談を言って・・・と、怒りが湧いてくることもなかった。


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