第247話「蘇るのは過去のトラウマ」


蒼が家に泊まることになってしまった。


帰ろうとしていた蒼は、そのまま俺の部屋に逆戻り。



「すまんな。おふくろが変なこと言っちゃって」


「良いお母さんだね」



そう言う蒼さんは、俺の家に泊まりたかったのかな?



「たしか押入れに布団が余ってるはず。リビングに敷くからそこで寝てな」


「え、ここで寝ちゃダメなんですか?」


「いや、ここ死ぬぞ」



ここというのは、無論俺の部屋。


畳の部屋で、冷暖房はもちろんなし。


今の季節は余裕で氷点下まで冷え込む。



「それに、布団だって二つ敷く余裕はない」



物とかどかして、詰め込めばいけるとは思う。


だけど、そうするのはちょっと面倒だし、何より女子の隣で寝れるほど、俺は忍耐とかその他諸々を鍛えてはいない。



「そんなの、添い寝すればすべて解決じゃないですか」


「もっと無理」


「布団敷く余裕ないなら、一緒に寝ればいいってだけの単純な話ですよ? それに、その方が暖かいじゃないですか」


「いや、なぁ」



そんなことしていいのだろうか。


蒼は一つ年下の女の子。一歩間違えれば大変なことになってしまう危険性を孕んでいる。


いわば、俺は爆弾を抱えて寝るということになる。



「リビングならエアコンあるから、暖かいから」


「一人は寂しいよ」


「いや、でもねぇ」


「わたし、先輩になら何されても構いませんよ?」


「そんなこと言われても」


「それとも、何かお望みがあるんですか?」


「望みは、君が暖かいリビングで寝て、風邪をひかないことですかね」


「それは却下で。それなら先輩と一緒に寝て風邪ひいた方がマシです」



最近思うことだが、この子はどこまでが冗談でどこからが本気なのかが分からない。


分からないからこそ、下手なことができない。


からかわれるのはイヤだ。笑われるのはイヤだ。


蒼からしてみれば、悪気がないのは分かっている。


でも、過去の教訓から、そういうことを言われるのがトラウマになっている。


俺に優しくするのは、何かウラがあるから・・・。



「・・・」


「先輩?」


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