第246話「母の余計な一言」


ある日を境に、蒼が俺の家にやって来るようになった。


平日は朝早くにきて、俺と一緒に登校。


休日も同様に朝早くやってきて、夕方までうちでゴロゴロ。


突然始まったそんな習慣は、何だかんだで2週間以上続いた。



「あれ・・・? 雪じゃん」


「あ、ほんとだ。そりゃ寒いわけだ」



金曜日。最近は放課後にまでうちに来るようになった蒼。


明日が土曜日ということもあって、今は21時半。


もうすっかり暗くなった時間帯で、雪が降ってきてしまった。



「そろそろ帰らないと」


「送っていくよ」


「ありがと」



寂しそうに私物をカバンにしまい、そして立ち上がる。


毎回「帰らないと」って言うのは蒼の方。


その言葉は、いつも泣きそうなぐらいに切ない口調だ。



「あら、帰るの?」



階段を下りて玄関へ向かう途中、母親とばったり遭遇。



「あ、おじゃましました」


「雪降ってるよ?」


「はい」


「大丈夫?」


「まぁ、何とか」


「俺が送ってくから」



と、ここで俺が口を挟む。



「うーん。もし蒼ちゃんが良ければ、うちに泊まっていってもいいわよ?」



なんでうちの母はこう、余計なことしか言わないのだろうか。


まぁでも、外は暗いし、雪もかなりの量が降っている。


歩くのは危ないっていうのは分からなくもない。



「え、いいんですか?」


「うちじゃ、なにもおもてなしできないけど。それでもいいなら」


「そんな、とんでもないです。お世話になります!」



まぁ、こうなりますよね。


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