第244話「そういうことだけ察しがいい」


日曜日。蒼は一方的に取り決めた約束通り、我が家にやって来た。



「おはようございまーす!」



元気のいい挨拶だ。



「おはよ」


「あれ、先輩起きてたんですね」


「蒼がくると思ったから」



珍しく日曜日に早起き。


どうせ蒼は来るだろうと思っての行動だ。


結果、予想通りということで。



「さすが先輩ですね!」


「なにがですか」


「とりあえず、おはようのキスでもしましょうか」


「Why!?」


「あーあ、先輩は千載一遇のチャンスを逃しちゃいましたね」


「今のどこに千載一遇要素があったんだ?」


「え? 私とキスできるチャンスですよ? もしかして、私じゃダメなんですか?」



蒼って、こんな感じの人だっけ?


よくよく考えなくても、最近の蒼はどこかおかしいような気がする。


平日は朝早くから俺の家に来て、放課後は部活動で帰るのも遅い。


土日も同様に朝早くから俺の家に来て、部活動とさほど変わらない時間帯までゴロゴロして帰る。


まるで、自分の家にいたくないかのような立ち回り。


年末年始の出来事もあってか、そういう思考に至ってしまう。



「蒼さ」


「どうしたんです? 改まった感じで」


「いやさ、また、何かあったのかな? って」


「なにかって?」


「いやその・・・家庭のこと」



はぁ・・・。そんなため息が、彼女から聞こえてきた。


察せられてしまったことへのため息なのだろうか。


ここ最近の彼女のテンションは、彼女らしくないほど高いものだった。


無理してキャラを作っていたというなら、説明はつく。



「また・・・ではないですね」



明らかに下がったテンションで、話しはじめる蒼。



「えっと、ずっとってこと?」


「先輩は、どうしてそういうことだけ察しがいいんですか?」


「知らないよ。でも、何となくそんな感じがしただけ」



そういうことだけ。ということは、彼女の悩みはそれだけじゃないのかな?


まだ何か、俺が察せれてないことがあるということ・・・なのか?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る