第242話「目覚めのお姫様」


土曜日。もちろん学校はない。だから、二度寝からの三度寝で、昼間まで思いっきり寝る。つもりだった。



「おはようございます!」



耳元でささやかれる。


鳥肌が立つような生暖かい息と、若い少女のような声。


そんな声の持ち主は、我が家にはいない。


そもそも、俺のことを起こしてくれるような人間はいない。



「・・・だれ?」


「あなたのお姫様ですよ」


「んー・・・ん?」



よく分らない言葉を耳元で発せられる。


それも、相当甘ったるい感じの声。


女子って、どっからそんな声出すんですかね。


と、寝ボケながらも思いつつ、次第に脳みそが仕事をしだす。


すると、現状がカオスなことに気が付く。



「おはようございます。先輩」


「なんでここにいる?」



目を開けると、そこには三永瀬蒼の姿が。


布団から起きあがらなくても、その顔はしっかりと見える。


彼女は前かがみになって、仰向けになっている俺と目線を合わせようとしているから。



「お寝坊さんですね。先輩は」


「まって、ちょっと待って」



と、ここでようやく身体を起こす。


イレギュラーな事態が発生しても、寝起きで身体を起こすのは重たいものだ。


んで・・・。



「蒼さん?」


「はい?」


「今日は学校ないですよ?」


「分かってますよ」


「じゃあなんでうちに来てるんですか?」



それも、俺が起きる前にすでに俺の部屋にいるという始末。



「私がいると、不都合でもありました?」


「いや、ないけど」


「じゃあいいじゃないですか」


「来るならせめて事前に言ってくれない?」


「じゃあ明日も来ます」


「明日も来るの!?」


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