第235話「たかが知れてる悩み」


岩船先生が急に始めた部室の整理。


彼女が宣言した、今年度末に教師を辞めるという件。


その件について、友奈に相談したら、何も教えてくれなかった。


岩船先生には、何かしら俺に隠していることがある。


必ずしもそうとは限らないし、仮にそうだとしても、俺に言わなければならない理由はない。


でも、岩船先生とは部活だけでなく、プライベートでも会ったりする仲だ。


所詮は教師と生徒なのかもしれないが、それでもちょっとぐらいは事情を話してくれたって良いんじゃないか?



「・・・先輩、聞いてます?」


「あ、えっと。ごめん、なんだっけ」



完全に他のことに気をとられていた。


今は下校中。隣には蒼がいる。



「だから、もうすぐ期末テストですねって」


「あ、あぁ。そうだな」


「なにボーっとしてるんですか?」


「あいや、ちょっとね」


「岩船先生ですか?」


「なんでそうなる」



というか、なんで分かるんですか?



「はぁ・・・」



と、大きなため息をする蒼。


続けて彼女は、呆れた口調で言う。



「先輩の悩み事なんて、たかが知れてますからね」


「なんか、ひどくない?」


「でも、実際は岩船先生のことなんでしょ?」


「・・・」


「正解じゃん」



正解ですね。


なんか、負けた気分。


こういう時に、うまく誤魔化せないのはあまりにも不便すぎる。



「まぁ、そんなところ」


「何をそこまで悩んでるんですか?」


「いや、蒼には話せないこと・・・かな」


「なんかそれ、嫌な気分」


「ごめん」


「私はまだまだ、先輩からの信用度は低いってことなのかな」



と、しょんぼり言う。


信用度は決して低くはない。


蒼は何だかんだで最近はよく話すし、それなりに仲が良くなってきてると思っている。


だけど、これは岩船先生へのプライバシーもあるわけだから・・・。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る