第234話「私物整理」


「それって、岩船先生が学校を辞めるから・・・とかなんですか?」



急に部室にある私物整理をしだした岩船先生。


なんでそんなことを、このタイミングでするのだろうか。


脳裏によぎるのは、以前に教師を辞めるかもしれないと発言したこと。



「うーん・・・そうだなぁ」



と、頭を悩ます先生。


どう答えるべきなのか、それを悩んでいるようにうつる。



「別に、辞めることに反対はしませんよ。でも、個人的には辞めてほしくないってだけです」



これが自分の意見。



「生徒にそう言われるとはな。私も教師として成長してるんだな」


「俺から見たら、良い先生だと思います」


「ありがとう。でもな、私にも色々事情があるから」


「分かってます。だから、反対はしません」


「助かる」



そう言ってから、一時的に止めていた手を動かしはじめる。


作業を再開して、それからは黙々と・・・。



「お疲れ様です・・・」



少し経つと、三永瀬蒼がやって来た。



「何してるんですか?」



部室に入ってこの光景。


段ボールが積み重なっており、明らかに引っ越し前の光景。


そりゃその質問が飛んできますよね。



「片付けだ」



と、岩船先生が端的に説明する。



「そうなんですか」


「部活で必要なモノがあれば言ってくれ。残していく」



岩船先生が三永瀬蒼に対して言葉を投げかける。


それに困惑した彼女は、すかさずこちらに視線をおくる。



「俺はよく分からないから、蒼が選んでくれないか?」



ふむ。なるほどね。そんな理解したような表情をする。


それから辺りを見回す。


一通り見渡したのち。



「特にないですね」



と、その一言だけ。



「そうか。なら、全て持って帰ろう」



それから放課後の時間を使って、岩船先生の私物の片付けに勤しんだ。


段ボールの数は6個。段ボールに入らないような大きなものまであったので、それなりに量は多い。



「これ、どう持って帰るんですか?」



そんな蒼の質問に対して、岩船先生が答える。



「私の車で持って帰る。今日は手伝ってくれてありがとう。助かった」


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