第230話「異彩な二人と鈍感な人」
友奈と一緒に歩いていると、ばったり会ってしまったのが三永瀬蒼。
蒼は何かしらの用事があって外出していたと思うのだが、なぜか俺たちに同行することに。
「友奈さんですか? 岩船先生の従兄弟ってほんとなんですか?」
「そうだよ。佳奈美ちゃんよりちょっと年下」
と、友奈と蒼で会話が盛り上がっているご様子。
会話はあるけど、険悪な雰囲気は流れている。主に蒼の方から・・・。
友奈に関しては、どちらかと言えばそんな状況を楽しんでいるような。
この劣悪な環境を楽しむことができるとは、友奈さんどんな感性してるんですか。
「なんで、先輩と歩いてたんですか?」
「ちょっと相談事があってねぇ」
「なんの相談ですか?」
「うーん・・・恋愛相談?」
「え・・・?」
「勝手に捏造しないで下さい」
黙って聞いていれば、息をはくように嘘までつかれる。
というか、なんでそうなっちゃうんですか。
確かに岩船先生の相談事・・・みたいな回答されても困るが、もっと当たり障りのない回答があるような気がする。
もしかして友奈、嘘が苦手?
「じゃあ本当のところはどうなんですか?」
と、友奈に訊いても意味がないと思ったのか、今度は俺の方に視線を送る蒼。
なんて答えれば正解なのか。というか、俺に振られるとは思ってもみなかった。
「え、えっと・・・」
「実を言うと、大した話じゃないよ。佳奈美ちゃんのおはなし」
なんて答えればいいのだろうか。俺がおどおどとしていると、カバーしてくれたのは友奈。
俺が下手な嘘をつくよりも、友奈がこの場を丸く収めてくれる方がこちらとしては助かる。
「佳奈美ちゃんって、岩船先生ですか?」
「うん」
「どんな話なんですか?」
「気になる?」
「気になりますね」
「うーん。でも、ナイショかな?」
「どうしてですか?」
「人には言えないことだってあるんだよ。君だってそうでしょ?」
「わたしですか?」
「こんなに必死に事情を聴き出そうとしちゃって。結構わかりやすいのね」
と、そんな言葉と同時に、頬が紅潮する蒼。
何かを察しての表情の変化だろうが、俺にはさっぱり分からなかった。
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