第225話「教師と生徒の・・・」


天文部の顧問は、岩船先生だ。


しかし、諸事情により昨年まで夕凪先生が代行していた。


彼女はおっとりとした丸顔の女性で、優しく和やかな性格の持ち主。


誰にでも愛されそうなオールマイティな人だ。


そんな夕凪先生のファン(?)ということで、突如入部してきたのが暁匠馬。


陰キャには意味わからんレベルで距離の近い女友達や、天文学的数値な数の男友達がわんさかいそうな陽キャな彼だが、夕凪先生が顧問じゃなくなってからは天文部への出席率は低い。


が、彼が天文部に顔を出すときもある。


それはどういう時か・・・。



「うっす!」



陽気な声と共に、部室のドアが開かれる。


声の主は暁匠馬。



「あら、こんにちは」


「こんにちは。夕凪先生」



岩船先生と仲が良いのか、天文部にたまーに顔を出す夕凪先生。


彼女がいるときだけ、匠馬は匂いを嗅ぎつける犬のように部室へやって来る。



「あれ、岩船先生いないんすか?」


「今は会議中よ」


「なるほど」



と、夕凪先生とだけはやけに会話をする。


そんな二人を遠目で見るのは俺と三永瀬蒼。


岩船先生がいないと正直やることのないこの部活。


今は休憩時間のようなものだ。



「夕凪先生」


「なんですか?」



椅子に座っている蒼が、夕凪先生の名前を口にする。



「夕凪先生って、まだ若いですよね?」


「うーん・・・どうかしら?」


「先生的には、卒業した生徒が恋愛対象になることってありますか?」



と、唐突にそんな発言。


これには背後に稲妻が走る暁匠馬。



「そうね・・・私はならないかな?」



ガクーン・・・。


悟られないように、静かに落ち込む匠馬。


それを温かい目で見守ることしかできない自分。


何と言うか、ドンマイ。



「三永瀬さん。どうしてそんなことを?」


「いや、まぁ・・・」



突拍子もない質問に、不思議そうな顔をして尋ねる夕凪先生。


個人的にもその質問をした意図は気になるところ。


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