第224話「顧問の復帰」


新学期が始まった。


3学期は短いと言うけれど、学校に行くという時点で憂鬱でしかない。


形式に縛られた始業式が終わり、教師がだべるだけのHR。それも終わると、放課後と呼ばれる時間になる。


帰る奴もいれば、部活に行く奴もいる、そんな時間。


天文部は活動があるらしいので、そそくさと部室へ向かう。



「やはりお前が一番なんだな」



部室を開けると、そこには岩船先生の姿があった。


そういえば、今日から岩船先生が顧問に復帰するんだっけか。



「教室にいてもやることないので」


「相変わらずクラスには友達がいないんだな」


「そんなもんですよ」


「友達は作っておいた方が良いと思うぞ」


「今さらじゃないですか?」


「遅いも早いもないと思うが・・・と、村上と同類のやつが来たな」



そう言われて、誰のことか一瞬分からなかった。


が、振り返るとそこには三永瀬蒼の姿が・・・。



「こんにちは。同類ってなんですか?」


「あ、三永瀬さん・・・知らなくていいことだと思います」


「三永瀬さんじゃないでしょ?」


「ア、ハイ」



そういえば、蒼って呼ばなくちゃいけないんだっけか。


なんか照れくさいというか、普通に慣れない。


下の名前で呼ぶことに、そんなにも大きな意味があるのだろうか。



「お前ら仲良くなったな」



と、岩船先生が。


彼女はコーヒー片手に、いつの間にかソファーに移動して謎の事務資料を眺めている。


レディーススーツも相まって、仕事してるんだなぁって感じの見た目になっている。



「仲良いですよ。ね?」



と、さりげなく腕を組まれてそう言われる。


年末年始のあの一件から、距離感がバグり散らかしてるような・・・。



「えっと・・・はい」


「先輩!」


「はい?」


「どうですか?」


「なにがですか?」


「こうされるの」



こう・・・というのは、腕を組まれてるこの状況のことだろうか。


別に恋人というわけでもないのに、どうしてここまで距離を詰めるのだろうか。


最近の若者はみんなこんなもんなのか?


というか、普通に恥ずかしい。


後ろ向きでこちらを向いていなとはいえ、岩船先生の目の前で・・・。



「まぁ・・・」


「まぁ?」


「悪くないです」


「へぇ?」



なんですか・・・この会話は・・・。



「イチャイチャするなら他所でやってくれないか?」



と、岩船先生がとめに入ってくれた。


正直こんな感じのノリだと俺の精神が持たないので、普通にありがたい。


蒼の表情が少し強張った気がするが、その日は普通に天文部の活動に入れたのでまぁ良かったということで。


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