第221話「居場所さがし」


「家庭に居づらい、学校にも居場所がない。唯一の居場所だった工場跡のやからとも絶交したし・・・わたし、何やってるんだろ」



弱音を吐きだす蒼。その表情は、怒りでも悲しみでもない感情。


虚無というか、脱力というか。


瞳からハイライトが消えたような感じ。


何かを変えようとして、何もかもを失ってしまった。


今の蒼は、そんな感じだろう。



「部活は、どう?」


「天文部?」


「そう。天文部なら、三永瀬さんの居場所はあるよ。みんな歓迎してくれるよ」


「そうかな・・・」


「俺は歓迎するよ」



実際に俺も、クラスでは居場所がない。


というか、友達がいない。


休み時間とか、机に伏せて寝たふりか、読書をして過ごすのがほとんど。


周りの目とか気になりながら、その場しのぎで過ごしている感じだ。


だけど、部活の時間だけは楽しいと思っている。


ちゃんと自分の居場所があるって感じがする。


蒼にも、天文部には自分の居場所があると感じてほしい。



「わたし、部活に馴染めてるかな・・・」


「馴染めてると思うよ」


「あの部活、星とかに興味ある人いないから」



言われてしまえばそれまでだ。


俺も暁匠馬も、星に興味があるかと問われればそれは違う。


顧問の夕凪先生も、あの人は社会科の教師で岩船先生の代理でしかない。



「でも、年明けからは岩船先生が顧問してくれるから。あの人はすげぇよ」



岩船先生はちゃんと理科の先生。


もちろん天文学云々には興味もあるし、詳しい。


蒼とは話が合うはずだ。



「岩船先生。わたし苦手かな・・・あの人」


「あ、そうなんだ。別に悪い人じゃないよ」


「それは分かってるけど」


「どうしたら、帰ろうってなる?」



蒼が求めてるモノ。それはなんだろうか。


自分の居場所を求めてるのだろうか。


自分の存在を肯定してくれるところを求めてるのだろうか。


それとも・・・。



「私は・・・いま、村上先輩に誓ってほしいです」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る