第217話「神からの試練」


例えば、いま目の前にいる蒼が平林綾香と同じ境遇を辿っていくとして、俺はどんな行動に出るのだろうか。


何かしら、行動に移さないといけない。


そうじゃなきゃ、同じ悲劇を繰り返してしまう。



「おはようございます」


「おはよ・・・んー」



大きなあくびと共に、思いっきり腕を伸ばす蒼。


1月2日。別荘に来てから2泊を過ごした。


もちろんこの間に、やましいことは何も起きていない。


いつもと変わらないような表情。いつも通りの仕草。


でも、蒼の心の中が心配で仕方ない。



「大丈夫そう?」


「何が?」


「いや、精神的なやつ」


「うーん。今は大丈夫。先輩も一緒にいてくれてるしね」


「ならよかった」



ここにいれば大丈夫。


そんな言い方だ。


でも、いつまでもここにいるわけにはいかない。


いつまでも現状維持でいるわけにはいかない。



「少しずつでいいから、帰るための準備をしよっか」


「・・・そうだね。いつまでも先輩を拘束するわけにもいかないし」


「ゆっくりでいいからね」


「ありがとうございます」



神様がこの世に存在するとしたら、俺はいま試されているのだろう。


平林綾香。彼女の死で何を学んだのか。何を得たのか。


今の蒼を見ていると、どうしても脳裏に平林さんの存在が出てきてしまう。


平林さんと同じ境遇を辿る蒼の姿も想像できる。


もう二度と後悔はしたくない。


そのために、俺は蒼に対してどんな行動をすべきなのか・・・。


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