第213話「ポケットの中には・・・」


「じゃ、私が先輩のこと好きだったら?」


「そんなことないでしょ?」



蒼の言葉に、瞬時にそう返す。


自分が恋愛対象にならないことぐらい自覚している。



「本気ですよ?」


「うーん・・・ソナノ?」


「そうですよ」



本当だったら嬉しいのだが、ここまで蒼の表情がほぼ変化していないことがひっかかる。


人を疑い過ぎな気もするが、自分自身に対する評価が低すぎるとこうなってしまう。



「あー・・・えっと、ドッキリで引き返すなら今ですよ」


「じゃあドッキリです」


「ヤッパソウナンダ」



分かっていたけど、やっぱ悲しい。



「勘違いしちゃうと思ったんだけどなぁ」


「さすがにそれはないかと」


「でも、最後ちょっと揺らぎましたよね?」


「えぇ・・・っと」


「でも先輩、鏡とか見たことあります?」


「あるわ! 自分の顔面がこの世のモノとは思えない代物だってのも理解しとるわ!」


「あはは。でもわたし、先輩の顔面がもっとまともなら、本気で好きになってたかもしれませんよ」


「それは大抵の人間に言えることじゃないんですか?」



顔がイケメンなら、ある程度のことはカバーできる・・・と、勝手に思い込んでる。



「どうでしょう。顔も重要だけど、性格もかなり重要だと思うよ」


「俺の性格ってそんなに良くないと思うけど」


「先輩って自己評価低いですよね」


「まぁ」


「自分に自信を持てるようにしとかないと」


「それができたら苦労しないよ」



自己肯定感高ければ、陰キャなんてやってないと思う。



「今だって、先輩が押し切れば私とヤれてたかもしれないのに」


「別にいいですよ。ゴムとかないですし」


「あれ・・・私のポケットにこんなものが」


「なんで持ってるの!?」


「ヤる?」


「ヤりません」


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