第211話「しらふの朝」


「あの・・・私、ボロだしてないですよね」


「ボロ・・・?」



酔いがさめた蒼が、昨日の出来事について謝罪してきた。


別に謝られても困るだけなのだが・・・。


と、それだけで終わりなのかと思いきや、今度は質問タイムになってしまった。


質問というか、尋問というか・・・。



「わたし、先輩に変なこと、言ってないからなぁって」


「変なことしか言ってなかったような気がするけど」


「そ、そうじゃなくて」



何が言いたいのか分からないが、変なことしか言ってないのは割と事実。


正直驚いたし、困惑したし・・・。


でも、悪い気はしなかったからセーフだと思ってる。いや、むしろアリ。



「そ、その・・・私の気持ちとか・・・」


「気持ち?」


「はい・・・なんか、言ってませんでした?」



気持ち・・・ですか。


あまりにふわっとした表現すぎて難しいな。


俺が覚えてる強烈なものとしては、えっちのお誘い? と、一緒に寝ようってのだ。



「うーん・・・難しいね」


「そんなにボロボロこぼしてたんですか?」


「あいや、何と言うか・・・」



ストレートに伝えていいのだろうか。


これで気まずい雰囲気になったら最悪だが・・・。



「お願いします。教えて下さい」


「あ、はい」



何と言うか、隠し通せるような気がしなかった。


というか、行為には至っていないので、別にやましいことではないような気がする。


なので、ありのままの出来事を蒼に話す。


すると、元々赤かった顔がさらに真っ赤になる。



「ごめんなさいごめんなさい」


「あいや、別に・・・」


「えっと・・・ヤッてないですよね」


「何とか自制心を保てました」


「あ、ありがとうございます」



そこでその言葉はちょっとショックというか。


俺じゃ役不足なのは分かるが、でも普通に傷つく。


やっぱ所詮は、陰キャの引きこもりってことなんですかね。



「先輩・・・」


「はい」


「なんで、私からの誘いを断ったんですか?」



何なんですか、この人は。


なんか、間違いなく面倒くさい質問が飛んできたよ。


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