第210話「明けましておめでとうございます」


蒼はあっさりと寝付いてくれた。


それなりに長い時間バイクを運転していたこともあってか、肉体的に疲れていたのだろう。


後輩の女子とえっちなことができるせっかくのチャンスだったが、まぁこれで良かったと自分に言い聞かせる。



「あ、おはよ」



と、目覚めるとそんな声。


リビングのソファーで寝て、それから起きたのは外が明るくなってからのこと。


起きるとそこには蒼の姿もあった。



「あ、ごめん・・・寝坊したかも」


「大丈夫。明けましておめでとう」


「あ、うん・・・明けましておめでとうございます」



寝ぼけていたが、数秒遅れて理解が追い付く。


今日は1月1日。元日だ。



「顔洗ってくる」


「うん」



蒼は俺が寝ていたソファーを背もたれにして、スマホをいじっている。


昨日のハイテンションの面影は一切ない。


やはりお酒が入っていたからなのか、それともノリと勢いなのか・・・あるいはその両方か。


いずれにしても、普段の蒼に戻って良かった。


そう思いながら、顔を洗って再びリビングに戻る。


すると蒼から、こんな一言。



「ちょっとこっち来て」


「え、なに?」


「座って」



と、ソファーに座るように誘導される。


何が起こるんだ・・・困惑しながらも、言われた通りにソファーに座る。


蒼はソファーを背もたれにして床に座っていたが、その向きを180度回転させて俺と面向かう。



「あの・・・先輩」


「はい」


「昨日はすみませんでした」



と、そう言いながら頭を床にごっつんこ。


まさかの土下座である。



「え、えっと・・・まず土下座やめよ?」



土下座されたことなんてないから、逆に居心地が悪い。


蒼が顔を上げると、顔が紅潮して明らかに恥じている蒼の表情が見えた。



「すみません・・・ほんと、調子乗りました」


「大丈夫。気にしてないから」



昨日のこと・・・ということは、昨日の夜の出来事ということかな?


お酒を飲んで酔っても、しっかり記憶には残るタイプなんだな。


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