第209話「きみの隣でする読書」


酔ってる蒼を寝室のベッドまで運んできた。



「一緒に寝ないとヤダ」



ベッドの上にいる蒼が、次にしてきた要望がそれだった。


勘弁してほしいよ・・・マジで。



「隣にいますから、さっさと寝付いてください」



ということで、隣で適当に読書することにしました。


が・・・。



「うー・・・サムイ」



蒼がなかなか寝付かない。



「寒いなら布団持ってきます?」


「いらない。先輩が布団入って」


「入らないですよ」


「ナンデ」



なんでと言われてもねぇ・・・。



「もしかして先輩、カノジョとかいるんですか?」


「いないですよ」


「好きな人は?」


「いないですよ」


「じゃあいいじゃん!」


「良くないですよ」


「意地悪!」



そんなこと言われても・・・。


好きな人いないからって、オオカミみたいに襲い掛かっていいというわけではなかろう。



「蒼はさ、どうしてそんなにくっつきたいの?」


「わかんない」



分からないんですね。



「僕じゃ役不足ですよ。他の人連れてくるべきじゃなかったんですか?」


「それはダメ」


「どうして?」


「先輩がいいの」


「そうですか」



ちょっと嬉しいような。でもなぜ? ってなるような。


陰キャな男子としては、今の状況も含めて勘違いしてしまう。


蒼は俺のこと好きなんじゃないかって。


でも、きっとそうではないのだろう。


何か別の理由があって、俺とはそれなりに仲がいいと思っている。


そしてお酒もあって距離感がバグってる。


そう思うのが、俺の視点からすれば幸せだろう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る