第205話「これ以上は有料です」



「おまたせ」



そう言い、リビング的なところにあったソファーに座っていた俺の前に現れる蒼。


まさかの真っ白なバスローブ姿である。



「お、おう・・・」



16歳後輩のバスローブ姿は目のやり場に困る。


と、目を逸らした先に気になるものが・・・。



「・・・どうしたんですか?」



視線が固まっている俺を見て、蒼がそんなことを言う。



「あいや・・・手首」


「あっ・・・すみません、不愉快なもの見せちゃって」


「いや・・・そんな風には見てないけど」



バスローブの裾のさき、わずかに手首の傷が見えた。


それは誰が見ても、明らかにリストカットの痕だと想像できる。



「大丈夫なの?」


「何がですか?」


「いや・・・おれ、経験ないから何とも言えないけど・・・リスカする人って・・・」



過度なストレス・・・ってこと?


あまり詳しくないから、ほんとによく分からない。


それどころか、こんな傷あと初めて見た・・・。



「大丈夫ですよ。今はね」


「今は・・・って」


「あはは、嫌いにならないで下さいね。私って、こういう女なんで」


「嫌いにはならないけどさ」


「なら良かった」


「三永瀬さん・・・」



好奇心だろうか。


彼女に問いかけたいことが次々と浮かんでくる。


だけど、それを遮るかのように彼女は声を出す。



「これ以上は有料です」


「あいや・・・なんかごめん」


「良いんですよ。訊きたければ有料なだけですから」


「えっと・・・」


「そうですね。今晩わたしが満足するまで付き合ってくれたら全てをお話ししましょう」


「え、えぇ・・・っと」



あの・・・俺はどんな反応をすればいいんですか。


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