第202話「夕暮れのダム」


市街地をゆっくりと走っていたかと思えば、またすぐに山に突入した。


年末の12月31日。こんな日に出かける人もいないのだろうか。


コンクリートで舗装された山道は交通量も少なく快調だ。



「まだ、進むんですか?」



俺らの住んでいる街を出発して11時間とちょっと。


もう夕方で日も暮れ始めてる時間帯。


一向に戻る気配のない蒼が運転するバイク。



「もうちょっとね」



と、そんなことを言う蒼。


出かけることは、案外楽しいことだ。


だから、今この瞬間も楽しいと思っている。


その反面、少し不安なこともある。


蒼の様子が、少しおかしい気がする。



「三永瀬さん」


「なに?」


「どこへ行く気なんですか?」


「さー?」


「私たちのことを知らない、新天地ですか?」


「・・・」



蒼には、家出願望でもあるのだろうか。


しばらく走っていると、ダムが出現した。


山の中。人気もなく、自然が広がる中で唐突に出てくる巨大な人工物。


それを横目に進み、ダムの天端付近の駐車場に停車する。



「んー・・・さすがに疲れたわね」



腕をあげ、身体を伸ばす蒼。



「そうですね」


「こんなに遠くに来たのも久しぶりね・・・」


「そうなんですね」


「先輩をこんなことに付き合わせちゃってすみません」


「大丈夫。ちゃんと帰れれば」


「あはは、心配しすぎですよ」


「そう? ならいいけど」


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