第201話「すべてをリセットしたい」


「このままどっか遠くに行って、私たちのこと誰も知らない環境で、全く新しい生活を始めてみませんか?」


「・・・はい?」



この時、蒼の言ってることが普通に理解できなかった。


バイクは街中をゆっくりと走っている。


しかし、前から吹き付ける風の音はそれなりに大きい。


聞き間違いだろうか・・・。



「それって・・・どういうこと?」


「なーんか、すべてをリセットしたいんだよね」


「リセット?」


「もう、帰りたくない・・・みたいな?」



聞き間違いではなさそう。



「どうして?」


「分からないけど、もう面倒くさくて」


「俺を巻き込む理由は?」


「村上先輩には、一緒に付いてきてほしいから」


「え、なんで?」


「傍にいてほしいから」



何と言うか、微妙に会話が成り立たない。


蒼の過去は、あまり世の中で通用するようなものではない。


人間関係も例外ではないだろうし、今までの経験の中には、忘れたいものがたくさんあるだろう。


だからこそ、一度すべてをリセットしたいのだろうか。


そうすれば、生まれ変われるような気がする。


そう思ったのだろうか。


夜逃げというものだろうか。多分それに近いと思う。


だけど、それに俺が付き合う理由は・・・?



「あの・・・俺は帰りたいんですけど」


「まぁそうですよね。普通はそう思いますよね」


「えっと、三永瀬さんはこのままどっかに行ってしまうんですか?」


「どうしよっかな。って、思いながらいっつも帰宅してる」


「じゃ、帰るんですね」


「でも、今日は先輩がいる。だから、行ける気がする」



そんな気にならないで下さい・・・。


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