第200話「全く新しい生活を始めてみませんか?」


昼食を取り終えて、またバイクに乗っかる。


そして、走る。


ここまで6時間近く・・・だいぶ遠くに来た気がする。



「あの・・・三永瀬さん」



山道も終わり、市街地に入ってくる。


俺は相変わらず蒼の背中だけを眺める。


そして、彼女の背中に向かって話しかける。



「なに?」



バイクのエンジンの音、前からくる風の音。


それに紛れて、彼女のそんな声が聞こえた。



「いや、だいぶ遠くまで来たなぁって」


「そうね。もう250キロぐらいは走ったんじゃない?」


「そんなに走ったんだ・・・」


「まだまだ、遠くに行けそうな気がするわ」


「どこまで行くつもりなの?」


「どうしよっか」



あ、ノープランな感じなんですね。


ってきり、目的地があるのかと思っていたんですが・・・。



「無事に帰れるよね?」


「帰りたい?」


「最終的にはね?」


「そっか」



この返事は、蒼がよくする返事。


だけど、この返事をされる時はいつも思う。


彼女は一体、どんな感情なのだろうか。


中身の空っぽな、「そっか」の一言。


純粋に興味がないのか、それとも怒っているのか。



「村上先輩?」


「はい」


「このままどっか遠くに行って、私たちのこと誰も知らない環境で、全く新しい生活を始めてみませんか?」


「・・・はい?」



こいつは何を言ってるんだ・・・?


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