第198話「気分はどうですか?」


「村上先輩って、私が死んじゃったら悲しいですか?」



三永瀬蒼から出てきたその言葉は、脳内にひどくこびりついてしまった。


他人の気持ちなんて分かるはずがない。


ただの冗談で言ったのか、それとも何かに悩んでいるのか・・・。


再びバイクにまたがり、蒼の運転で道を進む。


目的地はもちろん分からない。


ただひたすら、交通量の少ない舗装された山道を進んでいく。



「先輩、気分はどうですか?」


「え? 気分・・・大丈夫です」



気分とはなんだ・・・?



「ならもっと飛ばしますよ!」


「・・・え?」



エンジンの回転数が上がる。


轟音と共に、風切り音も大きくなる。


カーブがくるたびに、車体が大きく傾く。



「ちょ・・・飛ばし過ぎじゃない?」


「こんなものよ」



こんなものなんですか・・・。


どう考えてもこれが平常運転には見えないが・・・。


目の前には蒼の背中しかないので、余計に怖い。


気になったので背筋を伸ばして、蒼の目の前にある計器類を覗いてみる。


速度計のところにあるのは、90前後の文字。


山道でそんなに飛ばしてもらったら困るんですけど・・・。



「三永瀬さん、安全運転でお願いします」


「分かったよ」



事故ったら確実に死んでしまうような速度。


蒼からしてみれば、普段から出している速度なのかもしれない。


でも、今日初めてバイクにまたがりますって人にこの速度はさすがに怖すぎる・・・。


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