第197話「峠道の頂上」
蒼の運転で、山奥をさらに走る。
やがて道も狭くなっていき、普通の車なら行き違いもできないぐらいの道幅になる。
「あの、どこまで行くんですか?」
「もう少しじゃない?」
と、曖昧な回答。
登り坂が続き、標高もどんどん高くなっていく。
そんな場所を走ること約1時間。
開けた場所に着いた。
「頂上よ」
「ワーキレイ」
バイクを停めて、目の前に広がる光景に息を呑む。
近くの山々が見えて、一部の雲が下に見える。
絶景だ。
山のふもとが見えるとか、街の景色が見えるとか、そういうのではない。
ただ山が見えるだけ。
でも、今立っている位置が他よりちょっとだけ高いということもあり、ただの山でも絶景に見える。
「ここの景色。いいでしょ」
「綺麗ですね・・・」
道路の脇に、砂利で作られた謎の駐車スペース。
この景色を目的として作られたのだろうか。
しかし、ここに至るまでの道が酷くて人の気配は全くない。
木製の古びたベンチもある。
蒼はそこに座り、深呼吸する。
気温は標高が高いということもあって氷点下寸前だ。
「はぁ・・・」
口から息をはくと、白い息としてふわっと浮き上がる。
「あはは、寒いですね」
それを見た蒼が、笑ってそんなことを言う。
「まぁ、寒いですね」
「一緒に温まる?」
「何言ってるんですか」
「あはは。でも先輩、座ったらどうです?」
「あ、あぁ・・・」
蒼の隣に座ると距離感が近くなるので・・・ということで立っていたが、蒼にそう言われたので、彼女の隣に腰かける。
「村上先輩って、私が死んじゃったら悲しいですか?」
唐突に投げかけられる意味深な言葉。
冗談なのか、それとも・・・。
「悲しいけど・・・え?」
「そっかー」
彼女から返ってきた言葉は、その一言だけだった。
どゆこと・・・?
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