第192話「教師と生徒の域でとどまった人間関係」


「辞めるって、どういうことですか?」



岩船先生からのはなし。


それは、3月で教師を辞めるかもしれない・・・という内容だった。


それにしても急な話だ。


一体どうして・・・。



「まぁ色々あってな」


「俺には話してくれないんですか?」


「すまないな」


「そうですか。まぁ俺と岩船先生は、教師と生徒ですからね」



そう、あくまでその関係だ。


教師と生徒。


周りからは仲が良いとか、その域を越えているとか。


そういう目で見られているのかもしれない。


でも実際に俺と岩船先生は、教師と生徒の域でとどまった人間関係だ。



「知りたいのか?」



と、岩船先生。


それは知りたいに決まっている。


ただまぁ、それは俺の好奇心のようなものであって、事情を開示する理由にはならない。



「知りたいですけど、無理には話さなくていいです」


「そうだな。まぁ村上にならどちらでも良いんだが・・・」


「余計に気になってきます」


「すまない。でも、もう少しだけ待ってくれないか? そのうち、絶対に話すから」



そう言われて、それ以上は何も話してくれなかった。


年が明けたら、天文部の顧問を復帰すると宣言したばかり。


なのに、それからたった3ヶ月で辞めるというのか?


それはいくらなんでも、無責任な気がする。


空気が悪くなった部室からは、早々に逃げ出した。


他に行くところもないので、家に帰った。


それからやることもなく、ボーっとしているだけ。


ボーっとしていると、どうしても岩船先生との会話が脳裏でリピートする。



「なんだよ・・・意味わかんね」



その日は、思うように寝つけなかった。


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