第189話「今年最後の帰り道」


部室をあとにして、今年最後の下校をする。


隣を歩くのは、三永瀬蒼。


学校から家の方向が同じなので、部活帰りはよく一緒に帰っている。



「仲いいですよね」



と、ちょっと皮肉そうに言う蒼。



「どうした? 急に」


「村上先輩って、岩船先生と仲いいですよねって」


「そうか?」


「そうです。普通、教師と生徒があそこまで距離近いのはないですよ。特に、岩船先生なら」


「岩船先生なら?」


「知らないんですか? 岩船先生って、割と厳しめの先生ですよ」


「そ、そうなんだ」



岩船先生とは、部活動でしか関りがない。


学年付きの先生でもなければ、彼女が担当する授業があるわけでもない。



「テストも難しいし、授業はつまらないし」


「悪口?」


「ずっと呪文を唱えてるの。もうちょっと楽しい授業ならいいんだけど」


「ちなみに、何の授業?」



岩船先生は理科の先生。


そこら辺の教科ってのは分かるのだが・・・。



「物理基礎」


「そりゃ呪文唱えるわ。そういう授業だもん」



物理はどうしてもね・・・。


難しいのは大いに理解できる。


先生の言ってることがわけ分からんってのも納得できる。



「それに先輩、岩船先生の体調気遣ってたでしょ?」


「それが?」


「そんな裏事情知ってるの、仲がいい証拠じゃん」


「ま、まぁ・・・」



とはいえ、あれもたまたま知ってしまったというか、何と言うか・・・。


確かに距離が近い感じはするけど、岩船先生にとって特別な関係ではない。


それだけは、間違いないことだ。


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