ChapterⅥ

第187話「今年最後の登校日」


冬が訪れる。12月という季節。


気温が下がり、制服の上にはコートが必需品になってくる。


例の一件から、三永瀬蒼はごくごく普通の女の子となっている。


性格は演じているが・・・まぁ、前みたいにヤバい連中と関わりがあるわけではない。


そして今日は、二学期最後の部活動。


なのだが・・・。



「あれ、夕凪先生は?」



と、匠馬が口にする。



「見てないな。どうしたんだろ」



続いて俺が言うと、そのタイミングで部室のドアが開かれる。


夕凪先生がやって来たのかと思えば、そこに立っていたのは岩船先生だった。



「あれ、岩船先生」


「久しぶりだな。村上。それに、三永瀬と暁も」



岩船先生は、元々は天文部の顧問。


しかし、諸事情により今は夕凪先生が顧問を代行している。



「どうしたんですか?」


「あぁ。ちょっと連絡があっただけだ」



俺が訊くと、そうあっさりと答えてから部室の中に入る。



「でも、夕凪先生いないっすよ」



と、これは匠馬の発言。



「連絡があるのはお前たちだ」



そう言った岩船先生は、顧問をしていた頃は定位置だったソファーに腰かける。


不思議そうに先生のことを見る生徒三人を一瞥すると、一呼吸してから口を開ける。



「夕凪先生は、一足先に冬休みだ。帰省したらしい」



と、そう言う報告。


あ、そうなんだ。


それで終わるような内容。


別に深刻なことでもないし、どうして岩船先生が一呼吸おいたのか割と謎である。



「ということで、冬休みの活動はなし。三学期にまた会おう。今日は解散」



と、二学期最後の部活動はあっさりと終了。


匠馬ががっかりした感じでリュックを背負うと、そそくさと下校していった。



「お前たち、ちょっといいか?」



匠馬が部室から出ると、なぜか帰ろうとしない蒼とセットに呼び止められる。



「なんですか?」


「悪いな、村上。それから三永瀬」



蒼は先程からほとんど・・・いや、全く喋らない。


ひたすらに空気になることに徹している。



「それで・・・」


「あぁ。ちょっと話があってな」


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