第186話「彼女の勇姿」


朝日も昇り、辺りが完全に明るくなる。


すると、アザだらけの蒼が扉から出てきた。


開けられた扉は、すぐに閉められる。


そして・・・。



「行くよ」



そう言われたので、蒼の怪我を心配しつつも、黙ってついて行く。


蒼の後ろを歩くが、彼女はふらふらと歩行もおぼつかない状態。


アザはもちろん、出血もある。


服は乱れている。


中で何があったのかは知らないが、大体想像はできる。


廃墟を出て、そこからしばらく歩く。


そして、人気のない公園に到着する。



「あの・・・大丈夫ですか?」



そう言って、ベンチに腰掛けた蒼にハンカチを渡す。



「ありがと。大丈夫」


「そう・・・ですか」


「ごめんなさい。あなたを連れてくるべきじゃなかったかもしれない。でも、傍にいてほしかった」



傍・・・か。


どういうことなのかさっぱりだが、一番気になるのは。



「何があったんですか?」



その一点だ。



「絶交したわ」


「絶交?」


「うん。もう二度と、あのグルには顔を出さない。関わらない」


「ど、どうして」


「私だって、好きであんなことやってるんじゃないのよ。普通の人間として、普通に生きたい。先生にマークされずに、友達と遊んで、部活とか楽しんで」



三永瀬蒼の正体は、ガラの悪いヤンキー。


ただそれは、彼女の望んだ姿ではなかったようだ。



「でも、大丈夫なんですか? その、簡単に絶交とか・・・」


「分からない。でも、先輩には私の勇姿を傍で見てくれたと思う」


「傍って言っても、壁越しですけど」


「でも、信じてくれるよね?」


「ま、まぁ」


「他の人が信じてくれなくても、村上先輩に信じてもらえればそれでいいんです」


「そか。でも俺じゃ、他の人への影響力はないぞ?」


「いいんです。村上先輩が、信じてくれるなら」



よく分からないが、それで蒼が満足ならそれでいいのかもしれない。



「これからは、私のことを普通の女の子として扱ってくださいね」


「お、おう」


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