第185話「彼女は前に進もうとする」


「どこへ向かうつもりなの?」


「大丈夫。先輩を悪いようにはしないから」



そういう三永瀬蒼。


しかし、たどり着いた場所は・・・。



「ごめん、先輩が想像していた場所だと思うけど、ここよ」



廃墟となった施設。


蒼と関りのあるヤンキーグルのたまり場となっている場所だ。



「あの、、、どうしてここに」


「とりあえず、ついてきて」



そう言い、フェンスが壊れているところから廃墟に侵入する。


そして、数ある建物から、一つの建物のドアの前に立つ。



「先輩は、ここで待ってて」



そう言われ、軽くうなづく。


それを確認すると、蒼は鉄製の扉を開けて、中に入る。


俺は壁に寄りかかり、その場でしゃがみ込む。


あたりは住宅街から離れているということもあって、やけに静かだ。


朝の早い時間帯というのも相まっているのだろう。


だから、かすかに壁の向こうの声が聞こえてくる。



「おい!」


「なんだと?」


「ふざけんな」



そんな、声量だけがバカでかい罵声。


それと同時に、女性の悲鳴声も聞こえてきた。


女性・・・とは言っても、その声の主は紛れもなく三永瀬蒼。


中で何が起こっているのかは分からない。


でも、ここで俺がドアを開けることは、多分できない。


やってはいけない。やったら、事態がさらに複雑になる。


それに、自分にまで被害が及ぶ危険がある。


痛いのは、イヤに決まってる。



蒼がなぜここに俺を連れてきたのか。


その真意は分からない。


でも、「助けてほしいから」では決してないだろう。


それだけは、なぜか理解できた。


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