第182話「相談というか、ただの会話」


流星群を観測中。


レジャーシートで寝転び、顔を空へ向ける。


そのまま、すぐ隣で寝転ぶ蒼から話しかけられる。



「相談がある」


「うん、聴くよ」


「村上先輩って、綾香と付き合ってた?」



唐突に出てくる平林綾香という名前。


蒼と平林に繋がりがあったというのは、前に話していた。


が、なぜここで彼女の名前が・・・。


しかも、付き合ってた? って。



「付き合ってはないよ」


「そう」


「どうしてそんなことを?」


「綾香が自殺するちょっと前に、好きな人ができたって言ってたのよ。年下の子で、ちょっと不愛想だけど根は優しい人」


「そ、そうなんだ」


「綾香が好きって言ってた人の名前は知らない。でも、村上先輩。あなたにしか当てはまらないのよ」


「その、不愛想だけど根は優しい人ってこと?」


「それもそうだし、他にも色々聴いてる限りだと、やっぱり村上先輩なのよ」



綾香からそんな評価を受けていたのか。


不愛想なのは納得だが、根は優しいの部分は自覚がない。


他人からだとそう見えてるのだろうか。



「もっと、俺がしっかりしてれば・・・」


「しっかりしてれば・・・なに?」


「あの頃の俺は、何もかもが曖昧だった。ある日、平林さんにキスされたんだ。突然のことだった・・・」


「そう。それで?」


「あの時の平林さんは、完全に病んでいた。もう、誰が見ても分かるほどに」


「うん」


「キスをしたあと、平林さんは逃げるように帰っていったよ。それが、最後に見た彼女の姿・・・」


「何もしなかったの? 言葉をかけたり」


「うん」


「キスされたのに、何も思わなかった?」


「思わなかった」



今思えば、なんで何も思わなかったんだろうと思う。


どう考えても、おかしいだろ。


いまは、ひたすら当時の俺が憎い。


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