第174話「蒼から見た平林綾香」


「私のことが信用できないって?」



そう言った蒼は、部室にある机に腰かける。


足を組んで、ぶら下がった足からローファーが脱ぎ捨てられる。



「まぁ、端的に言えばそう・・・かな」



蒼のことが怖い。


ちょっと前まではそんなことなかった。


でも今は、信用もなければヤンキーグルの一員でもある。



「なら、仕方ないわね。あなたの役には立てない」



と、そんな意味深な言い方。


この人、何か知っているのか?


そんなことを匂わせる発言。



「じゃ、一つだけ訊いてもいいですか?」


「いいわよ」


「三永瀬さんは、平林さんと面識は・・・ありました?」


「あったわよ」


「面識があって、普通に友達みたいな感じだった?」


「そんな感じよ」


「なら、三永瀬さんが知ってる、平林さんを教えてほしい」


「なるほど。まぁいいわよ」



そう言い、続けて彼女は口を開く。



「私が綾香と知り合ったのは、中学2年生。綾香は高1だったかな。あいつは陽気な人間で、どんな人ともすんなり打ち解けるような人間で。それでいて可愛いんだもん。ちょっと羨ましい」



と、そんな風に始まる、蒼から見た平林綾香の姿。


それを語る蒼の表情は、どこか柔らかい。砕けた感じだ。



「綾香の兄貴がうちの身内にいてね。それでうちらとも仲が良かったんだよ」



身内。と言うのは、恐らく俺や岩船先生たちがヤンキーグルと呼称している集団のことだろう。


というか、平林さんにお兄さんがいたのか・・・。



「こんなんでいいの?」



と、蒼が。



「ま、まぁ・・・」


「君の想像していた綾香とはかけ離れていた感じ?」


「いや、そんなことはない。でも、意外な一面もあった」


「そう」


「ところで、平林さんはそこで良好な人間関係だったの?」



そこ、とは、もちろんグルのこと。


俺が知ってる平林さんは、とても仲睦まじい友達がいる・・・って感じではなかった。



「客観的に見ればね」


「客観的・・・ということは?」


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